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No.130 新型コロナウィルスの変異に関する情報


2021年1月9日


 2020年12月初旬、英国で流行中の新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)に変異がみられ、しかも、変異したウィルスの方が、感染力が強いらしい、というニュースが伝えられました。

 9月以来、すでに1,400件が該当しているといわれます[1]。


 ここで紹介する論文 [1, 2]は、研究論文ではなく、研究者の意見をまとめたものですが、まだ論文化されていない段階での情報は貴重です。




・2020年12月8日、英国でパンデミックとなっているコロナウィルスの蔓延について定期的なビデオ会議を開催している小グループが、英国南東部のケントで感染者数が他の地区より多いことに注目。職場でのクラスターや人々の行動に変化が見られないことからこの地域のウィルゲノムを調べるよう研究者に依頼した。


・その結果、ケント地区での症例の半数はSARS-CoV-2の特定の亜種であることが判明。遺伝的な家系図では変異を示しており、その枝は残りのデータから突出していた(Loman N.)。


・この亜種は、B.1.1.7と呼ばれたがこれは感染速度が従来のウィルスよりも速いことが判明した。


・B.1.1.7には、4つのウィルス蛋白質を変更したウィルスの遺伝暗号の23の突然変異が含まれる。これら23の突然変異のうちの8つはスパイクタンパク質に影響を及ぼしている。Pfizerやモデルナ社のワクチンはこのスパイクタンパク質を重要なターゲットにしている。


・12月19日、英国、ジョンソン首相はロンドン、イングランド南東部にバリアントを封じ込めるためCOVID-19の厳しい制限下に置くことを発表した。これを受けて多くの国は英国からの旅行者に対し、国境を閉鎖した。


・ウィルスの変異株の発見は、ワクチンを定期的に更新する必要があるのではないかという議論が科学者の間で起こった(12月23日)。


・N501Yという名前の変異は、ヒト細胞への主要な入口であるアンギオテンシン変換酵素2受容体にウィルスのスパイクの結合を増加させる。すなわち感染力が強い。これは南アフリカで速く広がっている(Tulio de Oliveira)。


・B.1.1.7が変異した69-70delは、スパイクタンパク質の2つのアミノ酸が喪失している。これは以前にすでに現れていた。


・D796Hは、英国ケンブリッジで別の種類の突然変異と共に発見された。これに感染した患者では回復者からの血漿を投与したが最終的には死亡した。この変異種は、通常の野生型ウィルスよりも回復者血漿投与の効果が発現してくいというデータがある(Gupta R.)。


・レンチウィルスを設計し、SARS-CoV-2でスパイクの変異バージョンが発現しやすくしたところ、欠失だけでウィルスがヒト細胞に対して2倍の感染力を呈するようになることを発見した(Gupta R.)。


・P681Hはスパイクタンパク質がヒトの細胞に入る前に切断される部位を変えるという性質があるため注目すべきであると述べている(Drosten C.)。


・突然変異種が、従来型よりも危険という意見と、変異種は急速に他のウィルス株に置き換えられてしまうので問題がないという意見がある。変異種の影響を判断することは難しいという意見もある(Lakdawala S.)。


・難しい理由の一つが動物実験の難しさにあるという。フェレットを使った感染実験では、SARS-CoV-2の感染が早く起こってしまうので変異種が隠されてしまう可能性を指摘している。


・ワクチンと、自然感染により獲得した抗体はSARS-CoV-2の多くの部分を標的とするようにしているので広範な免疫応答性が期待できるのでワクチンが無効となったり、感染を繰り返すようなことを懸念する必要がないという意見もある。


・COVID-19ワクチンであるBioNTech社はPfizer社と共同で開発したワクチンは、メッセンジャRNAによってコードされるスパイクタンパク質の1270を超えるアミノ酸のうち9個だけが異なるだけと指摘している。


・B.1.1.7の出現は、ウィルスの進化を綿密に追跡することがいかに重要であるかをしめすものであり、追跡機能がない場合にはそのリスクを知ることができないので危険である(van Kerkhove)




 結論的には、ウィルスが感染を広げ、循環すればするほど変化する機会が増えることになり、拡大を抑えることが最大の予防であると警告しています。




参考文献:


1. Kennedy D. The conversation. Why it matters that the coronavirus is changing-and what this means for vaccine effectiveness. Medical Press, December 23, 2020.


2. Kupferschmidt, K. et al. Fast-spreading U.K. virus variant raises alarms. Science 01 Jan 2021: Vol. 371, Issue 6524, pp. 9-10 DOI: 10.1126/science.371.6524.9


※無断転載禁止


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