2021年1月20日
スウェーデンは、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の対策を強くとらなかった国の一つとして知られています。人込みを避けるようなソーシャル・デイスタンスは勧められましたがマスクの着用は勧められませんでした。学校が休校となることもありませんでした。
他方、米国では、大統領の楽観的政策もあり、初動での対策が遅れました。スウェーデンでは、感染者数は約52万人、死亡者数は、約1万。他方、米国では、約2,553万人が感染、死亡者は、約39万人に達しています(2021年1月17日、現在)。
高齢者の死亡率が高いことが報じられていますが小児については不明でした。
最近、スウェーデン[1]、米国[2]よりそれぞれ、幼児、学童のCOVID-19についての実態が報告されましたので概要を紹介します。また、米国のデータでは、青年期のデータも含まれています。
スウェーデンの面積は日本よりやや広く、日本全土に北海道をもうひとつ足した程度です。面積のわりに人口が少なく、スウェーデンの総人口は約950万人と日本の12分の1程度であり、東京23区と同じくらいと言われています。他方、米国の人口は、約3億人です。
スウェーデンからの報告[1]
Q.スウェーデンの対策は?
・2020年3月中旬、多くの国はCOVID-19 を防ぐため休校としたがスウェーデンは、幼稚園(1~6歳児)、通学者(7~16歳)は開いたままとし、マスクも奨励しなかった。
Q.調査の内容は?
・2020年3月1日から6月30日まで(学校は6月10日ごろに終了)の期間に全国で、集中治療室(ICU)に入院した1~16歳までの通園、通学児と教師の全ての登録を前向き研究としてスタートさせた。ICU入室者は最重症相当と考えられる。
この中には、小児の多臓器炎症症候群(MIS-C)が重症化してICUに入室治療を受ける可能性があり、これがCOVID-19により悪化した可能性があるので、これも統計の中に含めた。(注: 川崎病は小児におけるCOVID-19の合併症として知られる。MIS-Cと川崎病の区別は難しいとする意見が多い[2]。コラムNo.68参照)。
Q.調査結果は?
・2019年12月31日現在、スウェーデンの1~16歳の人口は、1,951,905人。
2019年11月から2020年2月までのCOVID-19流行前の期間に65人、流行期に入った2020年3月から6月の4か月間で69人が死亡した。
・2020年3月から6月にかけて合計15人のCOVID-19がICUに入院した(MIS-Cを含む)。これはこの年齢層の子供10万人あたり0.77人に相当した。うち、4人は1~6歳児であった(10万人あたり0.54人)。11人は7~16歳(10万人あたり0.90人)。これらの小児のうち4人は、慢性の合併疾患があった(悪性腫瘍2人、慢性腎疾患1人、血液疾患1人)。
Q.教師の感染例は?
・2020年6月30日までにスウェーデンで就学前教師10人、学校教師20人が感染によりICUで治療を受けた。103,596人の学校教師当たり20人(これは10万人当たり19人に相当)。医療者を除く他職種と比較すると、教師の発症は、就学前、1.10(95%CI: 0.49-2.49)、学童0.43(95%CI: 0.28-0.68)。教師の発生が特に多いとは言えない。
Q.スウェーデン調査の結論は?
・学童、就学前では重症COVID-19の発症は低い。1-16歳の195万人のうち15人がCOVID-19, MIS-Cまたはその両方の状態があり、子供13万人に1人の割合でICU入院が必要であった。
米国からの報告[2]
Q.何が問題か?
・SARS-2-CoV-2による感染が幼少、思春期、青年期の人たちにどのように感染するかの実態は不明である。
・米国疾病予防管理センター(CDC)の発表では、小児の感染者の割合は少ないという。2020年2月12日より4月2日までの期間で18歳以下の患者はわずか2%。
・他方、中国からの報告では、小児感染者、2,135人中、51%は軽症であった。
・小児、無症状感染者が多いと報告されているが無症状者は通常、検査を受けることがないので正確な実態は不明である。
Q.小児で重症化する可能性があるのは慢性疾患で治療中の場合
・177人の感染児童のうち、入院治療が必要な63%が慢性疾患で治療中であり、最重症となった感染者の78%に慢性疾患があった。CDCの別の報告でも同様であった。
Q.小児の多臓器炎症症候群(MIS-C)
・イタリアの報告では、川崎病類似症状の10例中、8例でSARS-2-CoV-2に対する抗体が陽性であった。
・ニューヨーク州からの報告では、川崎病類似例が100例以上あり、うち3人が死亡。
Q.米国での調査データは?
・2020月1日より9月8日までの症例。電子カルテを利用したインターネット利用の調査集計。
・25歳以下でコロナテストを受けた135,794人の結果の報告である。全体では650万人のデータが基本となっている。
・コロナテストを受けた回数
87%は1人あたり1回のみ。9%は2回。2%は3回。2%は4回以上のテストを受けていた。テスト回数は1人1回から最高28回までに分布。臨床的にCOVID-19にほぼ合致してもテスト陰性例が約10%ある。
・小児で発症しながらテスト陰性例は幼少児に多い。
・人種別では、黒人、ヒスパニック、アジア系に陽性例の比率が高い。
・陽性例 計5,015人の内訳:1歳以下:10%、1-4歳:16%、5-11歳:21%、12-17歳:30%、18-24歳:23%。若年者では青年期の陽性率が高値。
Q.SARS-CoV-2テスト陽性例で重症例の比率は?
・計359人の内訳:1歳以下:20%、1-4歳:11%、5-11歳:20%、12-17歳:33%、18-24歳:16%。
Q.慢性疾患がある場合のCOVID-19の重症度の比較は?
・慢性疾患なし:無症状ないし軽症は63%、重症は48%。
慢性疾患1種類あり:無症状ないし軽症は21%、重症は15%。
慢性疾患2種類以上:無症状ないし軽症は17%、重症は38%。
乳幼児、学童では、症状がCOVID-19に合致しているのにテスト結果が必ずしも陽性に出ないので反復して検査を実施しています。複数回の検査結果で陽性が証明された症例がありました。このような調査結果は、成人、高齢者とは異なる印象があります。その理由として、乳幼児では、検査での協力が得にくく、検体採取の検査がうまくいかず検査を反復して実施した可能性があります。
また、17歳から24歳までの年齢層で陽性者が多いというデータには十分、注意を払う必要があります。この年齢層の多くが通学しており、学内および通学中での感染拡大の可能性が心配されます。
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