2021年4月2日
新型コロナウィルスの感染者数は、わが国では全国で46万人以上、都内だけでも12万人に達しています(令和3年3月30日現在)。
すでに感染した人には、抗体ができていると推定されますが、その場合に、新型コロナウィルス・ワクチンを接種すべきか?あるいは、接種したときの副反応はどうなるのか?あるいは、感染したが症状がない無症状者にワクチン接種しても危険がないか?
これらの疑問に答えた論文[1]があります。
Q.どのように研究をすすめたか?
2つの研究を行った。
研究1:110人を新型コロナウィルス感染の未感染者と既感染者に分けて血清中の抗体価の上昇に違いがあるか、どうかを検討した。
研究2:230人を未感染者と既感染者に分け副反応の発生、強さ、種類に差があるか、どうかを検討した。
Q.問題点は?
・米国で進められてきたスパイクメッセンジャーRNA(mRNA)型のワクチンは、ファイザー社、モデルナ社により進められてきた。本研究は、この2社のワクチンの効果と副反応を検証したものである。
・未感染者と既感染者の間で抗体価の上昇は2回目接種にはほぼ同等となる。
Q.研究1の概要は?
・計110人の治験研究参加者、平均年齢40歳(24~68歳)を、血清陰性者(=未感染者)、67人(平均41.3歳)と、血清陽性者(=既感染者)43人(平均年齢41.4歳)に分けた。110人の全員がファイザー社(88人)か、モデルナ社(22人)のスパイクmRNAワクチン接種を受けた。
・SARS-CoV-2スパイクIgGを測定して、抗体価を測定した。
・1回目ワクチン投与後➡既感染者でワクチン接種者の抗体価は、非感染者の抗体価の10~45倍(13~16日目で25倍)に達した。
・2回目ワクチン投与後➡非感染者では抗体価は3倍に増加。
・両社のワクチン接種後の抗体価上昇には差がなかった。
Q.研究2の概要は?
・230人のワクチン接種者、平均年齢39.2歳の調査。148人が非感染者、82人が既感染者。
・69%に副反応が見られた。非感染者の46%、既感染者の89%。入院に至るような重大な副反応なし。
・一般的な副反応は注射部位の症状(痛み、腫れ、紅斑)であったが、既感染者ではより高い頻度で全身性の症状がみられた(疲労感、頭痛、悪寒、筋肉痛、発熱、関節痛)。
Q.結論は?
・既感染者は、mRNAワクチンの単回投与で非感染者の2回目投与に匹敵する抗体価の上昇がある。
・しかし、既感染者では、mRNAワクチン接種が1回だけで済むとは結論できなかった。
既感染者では副反応が未感染者よりも強く出る可能性があります。若い人で、無症候性感染者であった場合が問題でしょう。特に、小児や若年者では無症候性発症が多い可能性があり、時間がたつにつれ既感染者が多くなり、抗体価が高い場合が多くなることが予想されます。現在、進行中の小児における治験データの発表を待ちたいと思います。
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