2021年6月22日
アナフィラキシーは、食物、薬、虫刺されなどが原因となり、急に発症する死に至る可能性のあるアレルギー反応です。
アナフィラキシーの特徴は予測が難しいことです。アナフィラキシーを経験した人たちに尋ねると、多くの人でアレルギーがあることに気づいており、一部では、以前に一つ以上のアレルギー反応を経験しています。怖いのは、アレルギーがあることに気づいていない人が、突然、重いアナフィラキシーを経験することがあることです。これまでにアナフィラキシーを経験したことがない人がいきなり重度のアナフィラキシー反応をおこし、致命的になることがあります。
アナフィラキシーの対策は、症状を早期に認識し、自己治療に利用できる適切な薬を用意し、救急医療を迅速に求めることで最小限度に抑えることができます。
ここでは、アナフィラキシーの症状と診断について説明します。
Q.アナフィラキシーの一般的な症状とは何か?
・アナフィラキシーの症状は、通常、トリガーにさらされてから数分から1時間以内に起こる。
・アナフィラキシーで一般的な症状は以下の通りである。
➡蕁麻疹と皮膚の腫れ(血管浮腫)であり、ほとんどの場合に発生する。
➡呼吸器症状は頻度が高く、喘息やその他の慢性呼吸器疾患を併発している人に多くみられる。
➡立ちくらみ、めまい、かすみ目、または意識喪失(失神)を引き起こす高度の低血圧もしばしばみられる。
Q.アナフィラキシーの全身症状とは何か?
・皮膚➡かゆみ、紅潮、蕁麻疹、腫れ(血管浮腫)
・目➡かゆみ、涙、赤み、目の周りの皮膚の腫れ
・鼻と口➡くしゃみ、鼻水、鼻づまり、舌の腫れ、金属味
・肺と喉➡空気の出し入れが困難(呼吸困難)、咳の繰り返し、胸が締め付けられる、喘鳴やその他の息苦しさ、粘液産生の増加、喉の腫れやかゆみ、声のかすれ、声の変化、窒息感
・心臓と循環➡めまい、失神、不整脈
・消化器系➡吐き気、嘔吐、腹部痙攣、下痢
・神経系➡不安、混乱、差し迫った破滅感覚
Q.アナフィラキシーの経過は?
・重症では蕁麻疹や紅潮などの他の明らかな症状を伴わずに、突然の虚脱が起こる。このようなアナフィラキシーは、静脈注射実施後、あるいは昆虫に刺された後に起こることが多い。
・アナフィラキシー患者の最大20%が、2相性(二相)アナフィラキシーを起こしており、トリガーにさらされることなく症状が消失してから再発する。これは、最初の症状の数時間後に発生する可能性がある。
・まれに、アナフィラキシーが長期化し、治療にもかかわらず数時間または数日間続くことがある。
Q.アナフィラキシーの原因または引き金は?
原因は明確な場合と不明の場合がある。
・食品➡子供の場合、鶏卵、牛乳、ピーナッツ、魚、小麦、大豆が多い。10歳代および成人ではピーナッツ、ナッツ、魚、エビなどの甲殻類による原因が最多。
果物、野菜、種子、一部の香辛料、食品添加物など、あらゆる食品がアナフィラキシーを起こす可能性がある。
・抗生物質(ぺ二シリン系、セファロスポリン系)や鎮痛剤(アスピリン、イブプロフェン)などの投薬。
・蜂、スズメバチ、ヒアリなど昆虫の毒。
・静脈内に投与される造影剤。
・ラテックス手袋、風船、スポーツ用品、医療品にみられる天然ゴムのラテックス。
・アレルギー性鼻炎の治療で使われるアレルゲン免疫療法。
・食物摂取後(例 小麦、セロリ、エビ、またはその他の食物)、または薬物摂取後(例 アスピリン、イブプロフェン)のいずれかで運動をしたとき。
Q.アナフィラキシーのリスク要因とは?
アナフィラキシーは、比較的稀であるが一部で可能性が高い人がいる。
・過去に重いアナフィラキシー反応を経験したことがある。
➡過去に特定の物質で重いアナフィラキシーを起こした人はその後も重いアナフィラキシーを起こすリスクが高い。過去は軽症であっても重いアナフィラキシーを起こすことがある。ただし、過去の反応は、将来の予測とはならない。
・喘息およびその他の慢性呼吸器疾患
➡アナフィラキシーは重症化する可能性がある。
・その他の場合
➡心血管疾患、冠動脈疾患を持つ場合もリスクが高い。
Q.アナフィラキシーの診断は?
・潜在的な(可能性のある)誘因にさらされてから数分から1時間程度に発症する症状にもとづいている。
・アナフィラキシーと同様な症状を呈する場合と厳密に区別しなければならない。
これらには重度の喘息、心臓発作、パニック発作、食中毒がある。
・トリプターゼはアナフィラキシー反応により血液中に放出される物質である。アナフィラキシー症状が始まってから最初の数時間に採取されたサンプルでトリプターゼの増加が見られる。これは血中濃度を測定することができる。
Q.アナフィラキシー反応の機序とは?
・IgEと呼ばれる免疫グロブリンの存在により引き起こされると考えられてきたが、さらに別の機序があることが判明した。(コラムNo.176 参照)
・従来の考え方では、アレルギーのある人ではIgEは、食物、薬、昆虫の毒などの物質に反応して作られる。
➡このIgEは、体組織の肥満細胞と白血球の1種である好塩基球の外側に付着する。
➡特定のアレルゲンに対するIgE抗体を持っている人が再び、そのアレルゲンにさらされると、これらの細胞はヒスタミンやトリプターゼなどの特定の物質を大量に血流に突然、放出することがある。これらの物質は、アナフィラキシーに典型的な兆候や症状を引き起こす。
➡アレルギー反応は非常に強いため、生命を脅かすことがある。例えば、喉の突然の激しい腫れは窒息に繋がる可能性がある。
・一部の人では、アナフィラキシーはアレルゲンやIgEが関与しないプロセスにより反応が引き起こされる。肥満細胞が多すぎたり、肥満細胞が過剰に活性化している人もいる。
最近、多くの患者さんから新型コロナワクチンを接種したいのだが副反応が心配と相談されることが多くなりました。厚労省のホームページには、「ワクチン接種後に生ずる様々な事象について」という欄(https://www.mhlw.go.jp/index.html)があり、これとは別個にワクチン分科会副反応検討部会の報告があります(2021年6月9日付け。資料1-4-1 https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000790072.pdf)。
これによれば2021年3月7日より5月13日までの期間に3,201例の報告があります。この中に、かなりの割合でアナフィラキシーと記載されています。
接種によるアナフィラキシーは、発症率は極めて少数です。副反応を心配して接種を取りやめるか、あるいは感染を心配して接種するか、自分で判断して決めるということになります。私は自分が診ている喘息などアレルギ―反応の強い人には、どのような症状がありうるかを伝え、対処方法として申し込み時には、担当者にリスクを説明されていることを正確に伝えることを勧めています。
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