2021年8月11日
新型コロナウィルス・ワクチン接種後に集団感染を起こし、しかもデルタ変異体が多かったという報告がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)から緊急的に報告されました[1]。
デルタ変異体による感染はわが国でも急速に拡大しています。
ワクチン接種が、感染を完全に抑えたわけではなく、ワクチン接種後でも濃厚接触があれば容易に感染しうること、マスク着用の注意が強く喚起されています。
Q.論文の概要は?
・2021年7月、米国、マサチューセッツ州バーンスタブル郡で複数の大規模な公開イベントが開催された。7月3日~17日に街を訪問した同州の住人から469件のCOVID-19症例が確認された。うち346人(74%)は、2回のワクチン接種終了者だった。133人の患者検体の90%でデルタ変異体が確認された。PCR検体を利用し、サイクル閾値(ウィルス量)は、完全に摂取した患者と未接種者の間で差異はなかった。
集団発症の背景には、大規模集会、公共の場でのマスク着用なし、などの理由が考えられる。
Q.具体的な内容は?
・2021年7月、前記の場所で複数の夏のイベントや、大規模集会が催された。参加者の中で469人のCOVID-19発症が確認された。
・集会は、レストラン、ゲストハウス、賃貸家屋など密集した屋内、屋外で開催され、感染者はそれらに参加していた。入場チケットは主にマサチューセッツ州在住の男性を対象に販売されていた。
・患者の85%が男性。年齢の中央値は40歳。
・マサチューセッツ州の一般住民のワクチン接種率は69%。
・発症した患者の346人(74%)は発症の14日以上前に、ファイザー社製あるいはモデルナ社製ワクチンを2回接種、あるいはジョンソン・エンド・ジョンソン社を1回接種済み。
・133人からデルタ変異体を確認。1人でデルタAY.3亜系統が同定された。
・ワクチン接種者、274人(79%)がCOVID-19に一致する症状があった。
・入院者は5人。うち4人は、ワクチン接種が完全であった。死亡者なし。
・PCRのサイクル閾値(Ct)値はワクチン接種者と未接種者は同等であった。
Q.CDCからの注意喚起は?
・感染率の高い地域では屋内、屋外でもマスク着用が必要である。
・ワクチン接種後でも濃厚接触で感染しうる。
・参加者の全体数は示されていないが、チケット販売のターゲットとCOVID-19患者層が近似していること、イベント開始後、7日目ごろより患者数が増加し、10日目でマサチューセッツ州公衆衛生局にクラスターの可能性が報告されたにも拘わらず、18日目でイベント終了後も増加し続け、終了後、7日目でほぼ終息している。大多数が平均40歳の男性であったこと、さらにワクチン接種後が多かったこともあり、死亡者は出ていない。
図1:イベント開催の時間経過と患者発生数の関係を示した。
出典:Brown CM. et al. Outbreak of SARS-CoV-2 infections, including COVID-19 vaccine breakthrough infections, associated with large public gatherings — Barnstable County, Massachusetts, July 2021
Morbidity and Mortality Weekly Report, Center for Disease Control and Prevention より一部改変
デルタ変異株は、極めて感染性が強いことが分かります。どの種類のワクチン接種後であっても完全に予防することができませんでした。
恐らく、完全に抑え込むまでには相当の長期間を要すると予測され、その間はマスク着用、3密禁止などの注意は必要と思われます。
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