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No.19 閉塞性睡眠時無呼吸症候群はどう変わってきたか


2019年11月18日


 WHO(世界保健機関)の推計では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)の患者数は全世界で1億人に達すると報告されました(2009年)。

この推定数は、過剰ではないかと思われますが、米国では2015年度にOSAの医療費の総額は、124億米ドル(日本円 約1兆3,300億円)に達したことが判明し、実態の把握が必要という意見が出るようになりました。


ちなみに、わが国では成人男子の約3-7%、女子の約2-5%と報告されています(日本呼吸器学会のホームページ、2019年10月、現在)。また、Circulation Journal (2010;74:Suppl)に掲載されたガイドラインでは、わが国の推定患者数は約200万人と推定しています。


OSAは、合併症として認知症などの高次機能障害、脳梗塞、心筋梗塞など心血管系を高率で起こすことから、高齢化が進む現在、SASが原因に関わっているのではないか、と特に注目されています。


ここで紹介するPunjabiの論文 (2008年) [1] は、もっとも読まれてきたOSA論文の一つとして今でも注目されています。

ところが最近発表されたBenjafield らの論文[2](2019年)は、各国からの報告論文や数学的な推定を駆使して全世界のOSA総数は、約10億人に達すると推定しています。その中でわが国のOSAの総数は約940万人と推定しています。




Q. 10年前の報告との頻度の違い


 2008年の論文[1]では、OSAの頻度は、全人口の3-7%と報告されています。わが国の報告もこれに一致するものでした。ところが2019年の論文では、30歳―69歳で軽症から重症のOSAは計9億3600万人。CPAP治療が必要な中等症から重症は4億2,500万人に達すると推定しています。




Q. 重症度別の分析


 睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数をAHI(Apnea Hypopnea Index)すなわち、無呼吸低呼吸指数と呼び、この指数によって重症度を分類します。なお、低呼吸(Hypopnea)とは、換気の明らかな低下に加え、動脈血酸素飽和度(SpO2)が3~4%以上低下した状態、もしくは覚醒を伴う状態を指します。

軽症は5 ≦ AHI <15、中等症は15 ≦ AHI < 30、重症は30 ≦ AHI です。

この分類でわが国には、軽症が2200万人(対象者の32.7%)、中等症と重症が900万人(対象者の14.0%)と推定されました[2]。


ちなみに、罹患率の高い国は、中国、米国、ブラジル、インドの順となっていますが対象者で中等症以上は中国(8.8%)、米国(14.5%)、インド(5.4%)、ブラジル(26.0%)で、わが国の頻度は米国とほぼ同じ程度の比率です。米国ではOSAの診断、治療に膨大な医療費がかかっていることは先に述べた通りです。


中国人に多い理由は、遺伝的に起こしやすいこと、人種的な特徴、解剖学的に上気道が狭くなりやすいことが推定されています。恐らく、日本人に多い理由もこれによるものでしょう。




 OSAは、先進国では、本人が病気に気づいていない、また、正しく診断されていないことが問題だと指摘しています[2]。他方、途上国では、診断技術や治療機器がいきわたらず、これが結果的に未診断、未治療となっていると推定しています。

OSAは、以前は、仕事中の眠気、いねむりから深刻な事故を起こすことが問題でした。現在では、OSAは心血管疾患や認知症などの背景にある原因として注目を集めています。




参考文献:

1.Punjabi NM. The epidemiology of adult obstructive sleep apnea Proc Am Thorac Soc 2008; 5:136–143.


2.Naresh M.et al. Estimation of the global prevalence and burden of obstructive sleep apnoea: a literature-based analysis

Lancet Respir Med 2019; 7: 687–98.


※無断転載禁止



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