2021年8月21日
流行初期の多くの論文では小児では、成人と比較して新型コロナウィルス
(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)は少ないと報告されてきました。
わが国をはじめ、多くの国々では流行初期には、学校や保育園などが一律に休校となっていましたが、その後は感染後のリスクが高い高齢者に目が向けられワクチン接種は積極的に高齢者に対し実施されてきました。
他方で乳幼児、小児のデータは収集が難しいこともあり、ほとんど注目されることはありませんでした。
米国医師会雑誌、JAMAに最近、発表された論文[1]は、実は乳幼児の感染リスクが高いことを示す驚きのデータで恐らく家庭内感染を起こしている、というものです。
調査は、カナダで最も人口の多いオンタリオ州で厳密なデータで導き出された結論です。
Q. これまでに報告されてきた諸外国からの小児期から20歳までの感染発端者の頻度は?
家庭内感染の発端者が年少者である場合の報告は以下のとおりである[1]。
・ギリシャからの報告➡小児を18歳以下としたときに小児発端者は9%
・スイスからの報告➡小児を16歳以下としたときに小児発端者は8%
・デンマークからの報告➡20歳以下としたときに発端者は5%
・中国、広州からの報告➡20歳未満の発端者は5%
・中国、武漢からの報告➡20歳未満の発端者は1%
・韓国からの報告➡20歳未満の3%
・米国からの報告➡18歳以下の発端者は14%。これまでの報告ではこれは最も高値。
Q. どのように研究を進めたか?
・COVID-19の発端が小児であった2020年6月からの半年間の調査。
オンタリオ州在住の家庭内感染例6,280世帯を対象としてコホート研究
・0~3歳、4~8歳、9~13歳、14~17歳に分類される小児発端者を検討した。
・世帯の感染、小児発端者の症例から1~14日後に少なくとも1人の二次発生者がでたときを家庭内感染とした。
Q. 年齢別の小児発端者の頻度は?
・合計6,280世帯が小児発端者であり、1,717世帯(27.3%) が二次感染を経験した。
・小児発端者の平均年齢は10.5(SD=5.1)歳で、2,863 (45.6%)は女性であった。
・0~3歳の子供は、14~17歳の子供と比較してSARS-CoV-2を家庭内に感染させる確率は最も高値であった(オッズ比 1.43: 95%CI 1.17-1.75)。
・この関連性は、発端者の2~14日後または4~14日後の二次症例を定義する感度分析、および症状の存在、学校/育児の発生との関連、または学校/育児の再開による層別分析でも同様だった。
・4~8歳および9~13歳の子供も感染のオッズが増加していたが両群に有意差なし。
4~8歳および9~13歳ではともにオッズ比1.40(95%CI 1.18~1.67)
0~3歳の乳幼児からの世帯感染の調整オッズは14~17歳の1.41倍だった。
・発症から検査までの日数が遅れるほど家庭内感染のオッズが高値となった。0日と比較して1日遅延ではOR=1.24、2日遅延ではOR=1.59、3日遅延ではOR=1.97、4日遅延ではOR=2.38、5日以上遅延ではOR=2.98
・平均家族の人数が多いほどオッズが増加する。OR、1人当たり1.63増加(95%CI 1.43~1.86)
Q. 結論は?
・年少の子供は年長の子供と比較してSARS-CoV-2感染を伝播する可能性が高い。感染の確率が最も高いのは0~3歳の子供であった。
・小児の年齢層の感染力の違いは、家庭内の感染予防、学校/保育園児に影響する。家庭内感染の感染予防が重要。家庭の二次感染リスクを最小限に抑える。
・若い夫婦や兄弟に感染している年齢構造を反映している。
Q. 問題点は?
・小児のウィルス量が成人よりも多いという報告が多い。
・5歳未満の子供は年長の子供や大人よりも鼻咽腔に多くのウィルスRNAを運ぶ可能性があると指摘。
・検査のタイミングに関係なく年少の子供は病気の時に介護者から自己隔離することができないという理由がある。
・小児発端者の早期検査が重要。世帯規模の縮小が家庭内二次感染を抑えると推定される。
・二次感染リスクを最小に抑えるためには学校/保育との関連も重要。
・介護者は濃厚接触となる可能性あり、対策を考える必要あり。
今回の0歳から3歳児が家庭内感染の発端者となる可能性は10歳代よりもはるかに高いというデータは、現在の感染対策の見直しを考えさせるデータです。
3歳以下では、体調が悪いという訴えがほとんど正確にはできないので、早期発見が遅れ、しかも、鼻咽腔の粘膜擦過などによるPCR検査の協力が得られにくいという問題点もあります。
保育所での感染の結果、家庭内へ持ち込まれるというケースがかなりありそうで早急の対策が必要です。
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