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No.234 睡眠時無呼吸症候群と心房細動の関係

2022年1月25日


 心房細動(AF)は、最も一般的に治療される不整脈として知られています。 AFの合併症は、血栓塞栓症(脳卒中を含む)のリスクと心不全です。


心房細動の有病率は年齢とともに増加し、60歳以上の人口の4%以上に影響を与えると推定されています。


典型的な症状には、動悸、頻脈、倦怠感、脱力感、めまい、立ちくらみ、運動能力の低下、頻尿、軽度の呼吸困難などがあります。より重篤な症状には、安静時の呼吸困難、狭心症、失神前、またはまれに失神が含まれます。さらに一部の患者では、脳卒中または他の全身性塞栓性イベントまたは心不全(呼吸困難、末梢浮腫、体重増加、および腹水による腹部膨満として現れる可能性がある)を呈します[1]

 AFは、高血圧が原因の心疾患や冠状動脈が動脈硬化で細くなり起こる心臓病ですが、なぜ、そのうちの一部の人たちにAFが起こるかは不明でした。最近、注目されているのは、共通の原因が閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)であるという論文です[2]。




Q. 理論的な根拠は何か?


・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)では、夜間睡眠中の低酸素血症および交感神経と副交感神経の作用が不均衡となり心房細動(AF)を起こす可能性がある。


・睡眠の記録中に、酸素濃度計から導出された脈拍変動(PRV)が、自律神経の心臓血管制御を反映する心拍変動の正確な目安となる可能性がある。




Q. 研究方法は?


・2007年から2017年までの10年間にOSAについて調査され、AFがない患者の大規模な多施設コホートからのデータを健康管理データにリンクして、新たに発症したAFの入院患者と非入院患者を特定した。コックス比例ハザードモデルを使用して、AF発生率と睡眠記録から自動的に生成されたオキシメトリ由来の指標との関連を評価した。




Q. 結果はどうだったか?


・平均5.34年間(3.3~8.0年)の中央値の追跡調査期間のうち、計7,205人の患者のうち181人でAFが発症した(130人はAFのために入院した)。


・体形、アルコール摂取量、心臓、代謝および呼吸器疾患、β遮断薬/カルシウムチャネル遮断薬、睡眠研究の種類、研究部位、および気道陽圧の順守を含む交絡因子を調整した後、AFリスクは夜間低酸素血症の増加と関連していた(酸素飽和度<90%の記録時間とのP= 0.004)


・PRV(連続する正常-正常拍動間隔差の二乗平均平方根の四分位数のPトレンド<0.0001)、および交感神経/副交感神経緊張の減少(Pトレンド= 0.0006(低周波電力/高周波電力比)がAFの発症に関連していた。

AFのリスクが最も高いのは、酸素飽和度が90%未満の記録時間の割合と、連続する正常-正常拍動間隔の差の二乗平均平方根の両方の四分位数(=PRV)が最も高い患者で観察された。




Q. 何が判明したか?


・OSAの存在に直接関連する生理学的事象である持続性低酸素血症や自律神経調節不全などがAFの発症原因となっているという理論を支持する。

➡この観察結果は、OSA患者の心房細動のリスクをより認識し、OSAにおける低酸素血症と自律性調節不全のメカニズムを明らかにした。


・OSA患者の心房細動リスクの有意義な予測因子が夜間睡眠中の酸素飽和度の連続測定が効果的であることが判明した。



 

 循環器疾患と呼吸器疾患には、互いに重なり合う部分がたくさんあります。睡眠時無呼吸症候群と心房細動の関連はその1例です。他方、呼吸器疾患側から言えば、COPD、喘息、間質性肺炎で軽度のOSAでも低酸素血症が増強している患者さんがたくさんいます。

大まかにいえば、夜間睡眠中の低酸素血症が持続する時間が長く、頻度が高い場合には心房細動を起こしやすいということになります。酸素療法およびCPAP(持続陽圧呼吸)治療をどのように使い分けるかという点でも、ここで紹介した論文は日常の診療では重要な情報と考えられます。




参考文献:


1.Kumar K. Overview of atrial fibrillation- UpToDate, Literature review current through: Dec 2021. This topic last updated: Jan 21, 2022.


2. Blanchard M. et al. Association of nocturnal hypoxemia and pulse rate variability with incident atrial fibrillation in patients investigated for obstructive sleep apnea. Ann Am Thorac Soc 2021; 18: 1043–1051.

DOI: 10.1513/AnnalsATS.202009-1202OC


※無断転載禁止

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