2020年2月17日
新型コロナウィルス肺炎は、感染ルートが必ずしも特定できない状態で、各地に散発し始めています。
感染により重症化する患者さんは一部に過ぎないと報道されていますが、高齢者と「持病」、「基礎疾患」がある人ではリスクが高い、と注意が喚起されています。
持病、基礎疾患とはどのような病気を指すのか、どのような環境で起こるのか。
これらは、生活環境の貧しさと深く関わっていることも知られています。ここでは、最近、英国から報告された論文[1]を紹介します。
Q. 研究の目的と方法?
医療保険や設備が整った先進国である英国でも社会的な地位が死亡率の高さに影響することが知られているが、その詳しい理由は不明である。
この研究では、教育を受けた長さ、職業上の地位、リテラシー(ここでは医学的な情報の知識、理解力)が「持病」、「基礎疾患」と言われる慢性疾患の発症に関わるかどうかを調査研究した。
英国在住の一般市民で35歳以上の人たち、10,308人を対象とし、2002年から2015年まで定期的に4回、慢性疾患の発症、体調不良の状態(frailty)、身体障害の有無を調べた。その人たちが50歳に達した時点での調査結果に関わる原因を調べた。
ここでいう慢性疾患とは以下の疾患を含む:糖尿病、冠動脈疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患;肺気腫、慢性気管支炎)、うつ病、癌、認知症、パーキンソン病。
Q. 調査結果は以下の通り
全体の調査対象者のうち、50歳に達した時点での調査が可能であった6,425人の結果を解析した。多くの一般市民を23.6年間にわたり追跡調査したという研究の特徴がある。
約24年間に全体の26.4%に何らかの慢性疾患が発症した。
体調不良の状態(frailty)は、27.6%, 何らかの身体障害は10.8%にみられ、9.5%が死亡していた。
死亡率を高くするリスクでは、慢性疾患ありは4.12倍、体調不良の状態では2.38倍、身体障害ありでは1.73倍であった。慢性疾患があれば死亡率は高くなる。
注目すべきは、職業上での地位が健康を害し慢性疾患の発症に一番、大きく関わっていたことである。この理由は、それまで受けてきた教育、その地位でのサラリーなどが健康に関わることを深く示唆する。
会性・経済性は慢性疾患の発症、フレイルおよび障害発症の高さの全てに関係していたが死亡率の高さには無関係だった。なお、癌の発症は社会性・経済性や職業のどれにも関係していなかった。
社会的な格差は、慢性疾患の発症に関係するが、発症してからの予後には関係がなかった。
これは医療を均等に受けているからであろう。
Q. この調査結果から学ぶこと
慢性疾患を発症させず長命となるには、発症する前の自己管理(セルフマネジメント)が重要であろうと著者たちは推論している。すなわち、50歳前の健康管理が大切であるということである。
慢性疾患は多彩であり、どれもが高齢化と深く関係しています。しかも障害やフレイルを起こしやすく、冬季では特に肺炎を起こすことが多くなります。慢性疾患のなかでもCOPDは適切な診断、治療が行われておらず、インフルエンザの罹患は増悪を起こす重要な原因の一つとして知られています。新型コロナウィルス肺炎の死亡者の中にCOPDが多いのではないかと推測されます。
新型コロナウィルス肺炎は、既に知られているインフルエンザ以上の危険となる可能性が高いので持病としてのCOPDは適切な診断、治療が必要です。自己管理が大切ですが、まずCOPDを正確に理解することが大切です。
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