2020年4月14日
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世界中に猛威をふるっています。患者総数は180万人、死亡者の総数は11万人、回復者は43万人と報じられています(2020年4月13日現在)。
治療薬の候補がいくつか挙げられていますが、中でも期待されているのがレムデシビルです。最近の医学雑誌にその詳細が紹介されています[1]。
レムデシビルは、2015年に抗ウィルス作用からエボラ出血熱の治療薬として約500人に対し投与されたという実績がありますがその効果は必ずしも十分とは言えませんでした。
Q. レムデシビルという薬?
投薬により体内に吸収され、細胞内で代謝されウィルスが有するRNAポリメラーゼを阻害する。これによりウィルス増殖で必要なRNA合成を抑制し、結果的にウィルスの増殖を抑えむ。Gilead Sciences社製。
Q. どのように投与されたか?
通常、新しい薬剤の効果を検証するには患者を無作為に分け、実薬と偽薬を治験にあたる医師、患者の両者に分からないように投与するランダム化プラセボ対照試験が実施され統計的な有意差により有効性が証明される。この研究では、Covid-19の診断が確実でしかも、重症で治療中の人で同意を得て実薬のみを投与した。
治験期間は10日間。初日にレムデシビル200㎎を点滴で投与、その後の9日間は100㎎を投与。2020年1月25日より試験開始で3月7日に終了している。
Q. どのような患者を治療したか?
COVID-19が確実であり、酸素投与なしで酸素飽和度が94%以下か、酸素投与中の患者。61人に投与したが、データが欠損しているなどの理由で8人は除外。
腎機能障害なし、肝機能障害は検査値が健常者の5倍未満の障害にとどまる患者、計53人。内訳は米国 22人、欧州、カナダ22人、日本9人。うち、30人は人工呼吸器装着中、4人はECMO(体外式膜型人工肺装置)使用中。
Q. 投与の効果?
治療開始後18日目で36人(68%)に改善効果がみられた。うち、30人中17人では人工呼吸器から離脱できた(57%)。25人は退院。7人が死亡。死亡率は、人工呼吸器ありは18%、なしでは5%であった。死亡者では70歳以上の高齢者が多かった。以上より53人中、36人に改善効果がみられたと判断した。
8人はレムデシビル投与にも拘わらず悪化した。酸素吸入、持続陽圧呼吸人工呼吸器装着の7人中の5人が改善。ECMO実施中の4人のうち3人が改善した。最終観察日までに53人中25人(47%)が退院した。
他方、レムデシビルの投与による副反応(副作用)は、肝機能障害、下痢、発疹、腎機能障害、低血圧だった。
Q.問題点?
レムデシビルの投与の前後でウィルス量が減少したかどうかは検討しておらず不明である。また、検討した患者数が少ないこと、ランダム化プラセボ対照試験ではなかったことから観察研究といえるものである。
今後、有望な治療薬が出てきたときにレムデシビルの効果と優劣を比較することは可能であり、COVID-19の抑え込みに希望が見えてきた感があります。早期に予防としてのワクチン開発を期待したいと思います。
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