2020年6月13日
新型コロナウィルスの治療薬の開発は、各国の専門家グループの間で熾烈な競争となっています。
新薬の開発は、スーパーコンピューターを駆使して10億くらいの候補物質の立体的な化学構造の設計図を作成し、さらに薬と結び付く対象物(この場合は新型コロナウィルス)を結合の強さ、効率性など物理学的な視点から計算で絞りこみ、その中で選別した数種の有望な物質を培養細胞で期待通りのことが起こるかを確認していきます。これで絞り込めば動物実験に進みます。
新型コロナウィルス(SARS-CoV-2)は、ウィルス粒子(ビリオン)は、50〜200nm(ナノメートル)ほどの大きさです。1nmは10-9m。ヒトの細胞に感染して増殖するために必要なタンパクは25種余りで、これを作るための遺伝子をもっています[1]。他方、肺の細胞にあるACE2と呼ばれる受容体(鍵穴)にウィルスのスパイク状の糖タンパク(viral S protein)が鍵となり結合することにより細胞への感染が開始され、細胞内に入り込むと急速に増殖を開始します。治療薬やワクチンの開発の多くはこれらの過程のどこかを遮断することに向けられています。
図1は、最近、発表されたウィルスの断面の模式図です[1]。鍵となるスパイク状の糖タンパクに結合する物質は、本年2月の段階で8,000種が候補物質として報告されています[1]。
気が遠くなるような選別作業ですがこれにはAIが使われ、超スピードで行われているとのことです[1]。
(図1)
※〇部分がそれぞれウイルスのスパイク状の糖タンパク、ACE2受容体を示しています。
参考文献:
1.Parks, JM. et al. How to discover antiviral drugs quickly. N Eng J Med 2020; 382; 2261-2264.
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