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No246 関節リウマチに多い喘息とCOPD


2022年3月28日


 喘息も関節リウマチも日常の診療では頻度の高い疾患として知られています。関節リウマチ(RA)は全人口の1%を占めると云われます。


 日常の診療で、喘息、COPDの患者さんにRAの症状が見られる人が時々、診られます。

RAが肺に病変を起こすことは古くから知られてきました。間質性肺炎が合併する場合にはリウマチ肺と呼ばれています。私たちが診ている間質性肺炎の中にもリウマチ肺の患者さんがかなりいます。

 他方、喘息、COPD、気管支拡張症は呼吸器科医が診る頻度の高い疾患です。これらもRAと接点がありそうだと、推定されていましたがこれまで明確に関連性を述べた論文はありませんでした。


 ここで紹介する論文[1]は、RA側から見た喘息、COPD、気管支拡張症、間質性肺炎の関わり合いの理論と治療法について述べたものです。難しい分子生物学的な理論は割愛し、問題点と考え方を紹介します。




Q. RAとはどのような疾患か?


・RAは関節の構造である滑膜の炎症により、進行性の関節破壊を引き起こす多系統障害である。


・RAの関節以外の病変の一つが肺病変であり、肺血管、胸膜、気管支、細気管支、肺胞、の全ての領域で病変を起こす可能性がある。特に気道病変が注目されている。




Q. RAの機序の概略は?


・関節や肺組織など末端器官の損傷は、抗体により引き起こされる炎症である。シトルリン化タンパク質抗原(ACPA)に対する抗体が滑膜疾患での病変を引き起こし、RAの悪化と関連している。


・複数のシトリルリン化ペプチドがRAの病変の原因に関係している➡樹状細胞を介して免疫系に取り込まれ、T細胞、B細胞の相互作用を起こす。その中でACPAは抗環状シトルリン化ペプチド試験(抗CCP)により簡便に臨床的に測定できる特徴がある。


・血液中のACPA陽性所見は、将来、RAが発症する予測因子である。


・ACPAは、破骨細胞に結合して破骨細胞の増生を促進する➡関節を破壊する。


・RAは軟骨を含む喉頭病変、喘息、COPD、気管支拡張症および炎症性細気管支炎を起こすことが判明してきた。軟骨を含まない組織にも免疫学的な炎症を起こす。




Q. RAによる呼吸器症状とは?


・RAにより輪状軟骨関節の滑膜炎を引きおこす➡嗄声、声質の変化、異物感などの喉頭症状を引き起こす。さらに、気道の細い部位に病変が及ぶと呼吸困難、疲労感、喘鳴、咳、肺炎の反復、胸部圧迫感、胸痛を認める。




Q. 喘息とRAの関連とは?


・RAと喘息はどちらも成人期女性に多い。両者の合併は男性よりも2倍である。


・気道に刺激抗原により不均一な過炎症性反応を引き起こすことで発症する。インターロイキン-4(IL-4)の発現により引き起こされる高Tヘルパー細胞2型(Th2)では高抗体価と好酸球増加を引き起こす➡これに対する抗体薬が難治性の喘息に有効である。


・RAの患者は喘息の発生率は年齢、性別を一致させた集団で2.07倍であった。


・喘息とRA合併の患者では、Th1とTh2の炎症が同時に発生する可能性がある。

➡従って、喘息に使用され劇的な効果を示す抗体薬はRAが共存する場合には効果は不明である。




Q. RAとCOPDの関連は?


・喫煙はCOPDとRAに共通した危険因子である。喫煙者では、両方とも悪化し、進行する。


・RAがある人ではCOPDの発症率は高くなる。




Q. RAと細気管支炎の関連は?


・細気管支は気道の壁から軟骨がみられなくなった細い気道であるがRAでは、ここに炎症が起こりやすい。高解像度コンピュータ断層撮影(HRCT)では、特徴所見が見られる。同じ変化は喘息にも同様な病変が見られることがある。




Q. RAと気管支拡張症の合併は?


・気管支拡張症は気道が長期にわたって損傷することにより、気道が広がり、壁が肥厚し、粘液の産生が増え、くりかえして炎症を起こすことにより肺炎を起こしやすい。


・RAに有効なステロイド薬などの治療薬は、下気道の感染リスクを高めるので同時に治療を行う際は、投薬が難しくなることが多い。


・悪化にはACPAが関わっている可能性が高いが不明点が多い。




Q. RAにおける呼吸器疾患の合併の考え方は?


・RAの患者での喘息、COPDの合併は相互に関係しているよりも併存疾患と考えられるが間質性肺炎では相互に関係すると考えられている。




Q. RAにおける呼吸器疾患をどのように鑑別していくか?


・息切れ、咳、痰、発作的な症状、嗄声、肺炎のくり返し ➡ 喘息、COPD、気管支拡張症、間質性肺炎の合併が疑われる。


・これらはRAの合併と見られる場合(喘息、COPD)とRA関連の場合(気管支拡張症、間質性肺炎)がある。


・症状の変化、発症の仕方に加え、抗CCP検査が鑑別に役立つ。


・その他は、胸部CT検査、精密な肺機能検査など検査所見にもとづき厳密に鑑別していくことが必要である。




 喘息やCOPD、気管支拡張症など慢性の呼吸器疾患では、ほとんどの場合に併存する肺以外の病気があります。高血圧や糖尿病がその代表です。高齢になるに従い、併存する他の病気が多くなり、互いにもつれあうように複雑になり全貌をみることが難しくなります。特に治療薬の選択が問題です。ポリファーマーシー(多種薬剤の処方)はできるだけ避けなければなりません。

 関節リウマチは併存することで呼吸器を含めた病気全体を診ることが複雑になります。

特に高齢者の場合には、治療に優先順位をつけ患者さんをいま、あるいは将来、苦しめる原因になることがないように判断して治療を進めなければなりません。その点では、関節リウマチが合併したときの注意点は他の疾患にも応用されると思われます。




参考文献:


1. Matson SM.et al. Airway disease in rheumatoid arthritis. Ann Am Thorac Soc Vol 19, No 3, pp 343–352, Mar 2022. DOI: 10.1513/AnnalsATS.202107-876CME


※無断転載禁止

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